〜さかのぼること10分前〜
「ゔっ、重っ」
私は思わず舌打ちをしそうになった。
両手に持っている、大量の野菜が入っている袋のせいで、私は今倒れる寸前なのだ。
数十分前、姉ちゃんに知り合いのおじさんの家に預けていた野菜を取りに行くように頼まれて、家を出た。
思ったより野菜の量が半端なかったのと、思ったよりおじさんの話が長くて、私が今歩いてる道は夜の7時50分の暗い道。
暗いし、重いし、見たいドラマもうすぐ始まるしっ‼︎
早く、帰らなきゃ。
そう思ったその時、不覚にも人とぶつかってしまった。
ドンっと、音を立てて私はそのまま壮大にずっこけてしまった。
「いったぁぁあ‼︎」
「…大丈夫?」
叫ぶ私を見て、ぶつかってしまった相手は私に声をかけてくれた。
「ゔっ、あ、す、すみません!怪我、ないですか⁇」
声をかけてくれた相手にすかさず謝ると、その人は変人を見るような目で私を見た。
「怪我なら自分の心配したら?」
「あ、はい」
あまりにもその人が冷たく言うので、私も素直に頷いた。
でも私は目の前に立っている男性を見て、なんだかスッキリしない気持ちになった。

