「はよー」
軽い声で私とモンちゃんに挨拶して来たのは、今教室に入ってきた男子、森岡弘樹だ。
森岡もモンちゃんと同じく、中学からの友達だ。
「おはよ、森岡」
「おはよー」
「…えっと、なんだっけ」
森岡はシュンを見てうーんと唸っている。
きっと名前が思い出せないんだろう。
「あ!山川!」
「片山な」
「片山かぁあ〜。惜しかったな!」
「いや、別に惜しくねーだろ」
森岡の言葉に対し、モンちゃんが冷たくツッコむ。
「珍しいな、片山とかといるの。つってもまだ1日目だもんな!」
「そーよ?まだ1日目なんだから〜。これから仲良くしよーね、片山?」
ニコっと笑う森岡とモンちゃんに対して、シュンは相変わらずあんまり表情が変わらない。
「それ、どーゆー意味?」
「だから〜、俺たち4人で仲良くしよーやって事っ」
森岡が明るく言った。
「あぁ、…めんどくさ」
小声でそんな失礼な事を言うシュン。
森岡にはそんな言葉聞こえてなかった。
幸せな奴め。
「ほら、シュン。そんな顔しないで」
「…うっさい」
「なんか寺田、母ちゃんみてーだな」
そう言ってかっかっかと笑う森岡。
母ちゃん?コイツの母ちゃんなんて勘弁。絶対大変そう…。
チラッとシュンの顔を見てみると、やっぱりすぐ気づかれて少し睨まれた。
ごめんなさい…。
何故か心の中でシュンに謝ってみた。
伝われば良いのだけど。

