彼は32歳で、普通に会社勤めだと言った。
私が18だと言うと、かなり驚いたようで
2,3回大きく目をしばたいた。
どうやら、会社の飲み会の帰り道に私を見つけたらしい。
彼の言う、「普通」にしたがって
私を助けたらしいが、私は別に放っておいてくれて構わなかった。
あの雪の中で死ぬのは、自分にとって最良の死に方だと思ったからだ。
そう言うと、彼は私をじっと見つめて
「18なんかの歳で、最良の死に方なんて
考えるな」
とあの吸い込まれそうになる瞳をした。
私は、どうにもこの人の、この瞳が苦手だ。
嘘をつけなくなるし、本当の心を見透かされているような気がしてならないからだ。

