「昔さあ、クロと会ったとき」
「待て、昔話始める気か?」
クロの不愉快そうな声が暗闇の中で響く
「そうだけど、なに?」
私が堂々と言うと、ため息が聞こえてきた
「お前が昔話なんて。何があった?そんなに寂しいのか?」
「失礼しちゃう。別におかしいことじゃないでしょ」
でも、確かに昔話は嫌いだ
昔のことなんて思いだしても、虚しくなるだけだ
この世界からは抜けられない
だけど、あの人に出会って
一時でも幸せを感じて
懐かしくなってしまったのかもしれない
身体が、心が
ぬくもりを欲してしまったのかもしれない

