「貸して」 今度は私の手から、彼がれんげをひったくる。 「ほら、分かっただろ。はい、あーん」 口元に運ばれてきた、れんげに乗ったお粥をぱくりと食べる。 「美味しいか?」 「ん」 熱すぎて上手く返事が出来ない。 彼はそれを見て、目を細めて微笑む。 彼のそばにいると、自分が自分でいられなくなる気がする。 この部屋の空気は柔い。 柔すぎて、自分の心までほだされていく。