雪の夜



「お兄さん、名前は?」



シズクの的外れな言葉に虚をつかれたのか、男性はやや反応が遅れた。




「今はどうでもいいだろ」


「良くないよ。私は名前きちんと言ったでしょう?」


男性は諦めたようにため息をついた。



「慶。吉沢慶」



「そう、良い名前ね」



さっき男性が言ったのと同じように言ってみせる。