「何してるの…?」
 面倒臭げな声が教室に響いた。
 高く澄んでいて、聞き心地が良い声…。

 目の前の彼女達の視線が一気に私の後方に注がれる。
 私もびっくりして涙を飛ばしながら振り返った。

 そこには、帰ったはずの東雲さんが居た。

 「あ、葵花…様」
 ぽかんと空いた口を戻せない私も含めたその場の人々。
 無理もない。東雲さんがこういうことに首を突っ込むのは今回が初めてだもの。

 「私を理由に、この人を虐めてるの…?」
 「そ、そんなことでは…」
 「こ、こいつが葵花様の私生活に支障を来す行為をするから…」

 「私は、そんなこと言ってないけど」
 「え…」
 「頼んでもないことを、正義ぶってされても困る」