「だからぁ、葵花様に近付くなっつってんでしょ!?分かんないの!?」
 「あんた葵花様の何!?いつも私達に断りもなく葵花様に近付いて!!」

 「わ、私は…ただ、東雲さんと仲良くしたくて…」
 私、川下 明日香は、数人の女子に脅されていた。
 理由は、皆の憧れの的、東雲 葵花さんに、私が気安く近付いていたこと。

 目の前にいる女子達は、東雲さんのファンクラブの人達。
 彼女達(勿論男子もいる)は、毎朝の東雲さんの靴箱のラブレターの回収、東雲さんへの告白の防止作業など、日々東雲さんの日常を妨害することを排除する活動に勤しんでいる。

 正直私は、東雲さんが可哀想だなと思う。
 だって、何もかも彼女達に排除されて、友達も出来ずにいるんだもの…。

 「何が仲良くしたくて…よ!!あんたはただ良い子ぶりたいだけでしょ!?」
 「そんなこと…」

 あぁ…タメだ。泣いてしまいそう。
 笑え。笑え。笑え。
 でも、涙はじわじわと視界を侵略してくる。とうとう、涙が落ちそうになったその時…