本当は、私は呆れていた。
 この人、綺麗事をペラペラ並べる人種だ。

 世界の色なんて、本当はずっと汚いのかも知れない。
 だって、絵具だって色んな色を混ぜると、汚い茶色になってしまうじゃないか。

 確かに、空は青い。雲は白いし、風は、夏特有の色を持っている。
 でも、果たしてそれは綺麗なのか。
 …綺麗って、何?

 「あ、えと、俺、明日からここに通うんだ。七瀬 星也っていうんだ!!よろしくね」
 …は?
 な、なんで今自己紹介…なの?
 相手も、タイミングが最悪なのを理解したのだろうか。
 顔をカーッと赤くして下を向いた。
 「…」
 意味が分からない。
 何故?恥ずかしい…の?
 「ご、ごめん…俺、タイミング最悪で…」
 手を顔に当ててモゴモゴと言う七瀬とかいう人は、思いっきり恥ずかしそうだった。

 「き、君は?」
 取り繕うようにぱっと顔を上げた七瀬を 冷たく睨む。
 こいつに対する用は済んだのだ。早く何処かに行ってくれないか…。

 視線を反らし、小さく呟くように答える。
これほど面倒臭いことはない。