「え?あの子のこと?大人しくてそんなことしそうには見えないけどな……」

「友達思いだから、周りで何かあった時に私はいつも相談していたよ」

「友達と仲が良くて、かわいいあだ名でいつも呼ばれていたよ。それで……」

周りからは友達思いの、落ち着いた子と思われていた。私も、なぎさんも、岡野さんも、あの人がそんなことしたとは思いたくない。

「佐伯さん、犯人が分かりました」

「本当!?こんな短時間で!?ありがとう!」

佐伯さんは短時間で調べたことに驚いたが、喜ぶ。

「で、犯人は誰!?」


「犯人は……佐伯さん、あなたです」

佐伯さんは何も言わなかった。動きも数秒前で止まる。

手紙を書いたのは岡野さんだった。でも、岡野さんはちょうど手紙を書き終えたときに佐伯さんに、教官が呼んでいたと言われた。後は自分がなんとかしておきますと言われ、教官のところへ行った。後は、佐伯さんがあの紙をいれ、便箋に付け足した。そして、空操禁書に運ばせた。

「あなた、空操禁書と関わりがありますよね?」

何故、空操禁書と関わりがあったのが分かったのかと言うと、数日前から佐伯さんが兵舎裏で、本を持った女の子と話していたという話を聞いたからだ。佐伯さんの話を聞いていると、そう話した人が何人もいた。

ずっと下を向いていた佐伯さんが、顔を上げた。

「今更そんなこと知ったって、意味ないよ」

恐ろしい声でそう言った。音子さんの事件の時に見たあの悪霊のような、不気味な、そして何かを諦めたような表情だった。

「どういうことだ!?」

岡野さんが問い詰める。最初は何も言わず誤魔化していたが、恐ろしい計画について話し始めた。盗難事件はこのことを気付かせないために起こしたらしい。

「もうそろそろ、あいつらが暴れ始めるんじゃないかな」

窓の外から悲鳴が聞こえた。そして、ガラスが割れる音や爆弾の音が聞こえた。

「あいつらって……?」

「私もよくは知らない。でも、人でないことは確かだな」