「お母さんは……寝てるね」

メイドさんたちは帰ったし、青(執事)は見当たらないけどきっと書斎で本でも読んでるんでしょう。お兄ちゃんはさっき出かけて行ったから……

「作戦開始!」

そう言ってから家の外に出ると、門には鍵がかかっている。

「これは塀を乗り越えるしかないね……」

私は頑張って塀の一番上まできた。けれど、

「きゃああ!」

さすがに飛び降りるのは危なかったかな。高い塀から飛び降りたことを後悔した。

誰か……助けて……

そう思ったら、

「お嬢様! 大丈夫ですか!」

本当に助けに来てくれた。

「青、助けてくれてありがとう」

「どういたしまして。お嬢様、なぜこんなところにいたのですか?」

それは聞かないでほしかったなあ……どう答えよう。
私が答えを言わぬ間に、青は手を差し伸べながら言い聞かせる。

「夜は危ないので家に帰りましょう」

「嫌だ……」

青は驚いていた。私が言うことをきかないなんて珍しいよね。でも……

「家に帰りたくないよ! 家に帰ったら自由じゃないもん!」

私は大声で叫んだ。今までの不自由を思い出し、杭を打ったように地面を踏みしめる。ここですごすごと家の方に足を向ければ、骨折してしまいそうなくらいだ。

「そうですか。でも、1人で外出するのは危険です」

私が精一杯言っても青は意見を変えず、心配そうにこっちを見ている。

でも私は絶対にこの家を出ていく。そう決めたから。

「ですから、お嬢様についていきます。それでいいですね」

「もう、それでいいよ! でも私の邪魔はしないでね!」

青は意気の強い声で言い、私も観念してそう宣言する。
こうして、私たちの冒険が始まった……