その瞬間、


ヒュー……

ドンッ――…


遠くで花火が打ち上がる音が聞こえる。


「あっ、花火……」


少し遠いが、今いる場所からでも十分見える。

抱きしめられたまま、顔だけ空を見上げた。


「遠いけど、ここからでも見れるだろ?」


颯は、にこっと笑いながら言う。


「えっ?」

「本当は、今年こそは一緒に見たいと思って、二人でゆっくり見れそうな場所、探してたんだ。でも、瑞希、今年も手伝いがあるって言うし。瑞希と二人で見る事、諦めてたんだけどさ……」


そう言って、颯は一呼吸置く。


「俺らが帰ろうとした時、お前、無理して笑ってただろ?本当は花火見たいんじゃないかって思ってな」


無理して笑っているつもりなんてなかった。

だけど、颯の優しさが嬉しかった。


「ありがとう」

「どーいたしまして」


顔を見合わせ、くすっと笑う。