空は、夕暮れ時だった。

小学生は、ランドセルを背負って元気に走っている。

後ろから電車が私の横を通る。

少し歩くと、十字路がある…が、通らない。通らなくても家には辿り着く。

十字路には、『黒猫』がいる。
別に猫は、嫌いじゃないし、苦手でもない。

ただ、十字路には『黒猫』という響きが不吉な感じがした。

ほら、私の目の前に『黒猫』がいる。
十字路に、道路の真ん中に。

『黒猫』は、簪(かんざし)を咥えていた。

「ダメでしょ。人の物だよ。」

-ニャァァ--

簪は、紅色がベースの配色になっており、桜のチャームと、小さな鈴が付いていた。

チリンチリンと鈴の音を鳴らし、『黒猫』が、十字路の奥へと進んで行く。

「あっ!待って!」

『黒猫』の後を追い、十字路の中に進んで行った。