月夜に悪魔



ザバッ…!



体が勢いよく上に上がった


ケホッケホと水を吐き出し、息がすんなりできるようになった


私…水から出てる?



目を開けてみると、バランが心配そうな顔で覗き込んでいた



「…!このっバカッ!」

バランが初めて私に怒った、いつもと違う激しい表情で


「今の時期に川で泳ぐか普通!?しかも溺れてるし…!」


「…!!花輪!」



私はハッと思い出して、花輪が見あたらない川へと手を伸ばす


「花輪…ってこれの事か…?」


バランがヒョイっと摘んでぱっと離す、すると私の頭の上に花輪がぽすっと乗った



「まだ枯れてない、少ししか触ってないから…」


「どうしてこれを…?」

「皐月ちゃんを探してる途中で川に流れてた、だからもしかしてって思ってここまで来たら、皐月ちゃんが溺れてた」


「そっか……」



皐月は安心してへらっと笑った


「じゃあバラン君…これ…受け取って」


「……え?」



「バラン君のために作ったんだから…受け取ってよ…」


「でも、俺が触れると枯れてしまうよ…?」


「いいの…花は枯れても気持ちは残るから」




そうか、早く気付けば良かった


おれは【形】に捕らわれすぎていたんだ


花という【固体】だけを考えすぎていて、皐月の気持ちが見えなかったんだ



俺は生まれて初めて涙を流した



「ありがとう…ありがとう皐月ちゃん…」


皐月はバランの頭の上に花輪を乗せた


「バラン君…似合うよ」


「そう?」


皐月が離れてしまわぬように、ギュッと強く抱き締めた