【瞬 side】

「本当に……ありがとう…瞬くん」


彼女のその言葉にオレは言いようのない幸福感を覚えた。


彼女、山吹汐音はクラスメイトで隣の席の子。

そして、オレが1年の時から想いを寄せていた相手。


もちろん、彼女はそんなこと知らないし、教えたりもしない。


だって、彼女の中にオレはいないのだから。


山吹には、同じ学年に彼氏がいる。
名前は、長谷川蒼汰。


いかにも女子に人気そうなルックスをしていて、高身長な長谷川。


そんなやつが彼氏なんてオレに勝ち目なんかないじゃん?


ーけど、長谷川は山吹という彼女がいながらも、浮気をしている。


それが、オレは許せなかった。
どうして、1人の女の子を愛せないのだろう。


1人の女の子すら満足に愛せないなら、彼女なんか作るなよ、

と思ってしまうオレだからこそ今まで彼女ができない理由のひとつなんだろうな。



けど、普通に思うじゃん?


自分の好きな子が他の男を好きなのは仕方ないことだけど、


その男が男として最低なことをしていれば、許せないって思うだろ。誰でも。




だからこそ、山吹という彼女がいるのに浮気する長谷川はオレは許せなくて…敵だと勝手に思っている。


絶対、オレの方が山吹に対する想いが強いはずなのに。



ねえ、山吹。



どうして、そんなやつが好きなの?



オレならもっと……、