余談だけど、私がいる文系Bクラスは人数が少ないため、全員が持ち上がりだ。
だから皆が慣れ親しんだメンバー。(まあその慣れ親しんだメンバーが私にコブタちゃん、だなんて名前を付けたのだけれども)


だから、わかる。

この人――私が扉を開けると同時に教室に入って来ようとした彼が、怪しいってことは。

私の通う学校は幾種類もの科やコースがある、いわゆるマンモス校だ。しかしその半面、関係のないクラスには関わらない。
だから知らない人間が(しかも人のいない時間に)クラスに来るなんて、変だ。




ほとんど同時に開けたためか、力加減が狂って手首が痛かった。
肩に通学鞄をかけたまま右手首をさする。
目の前の彼は驚いているのか向かいあったまま動かない。

彼の顔を思わず見た。

調った顔立ちだ。背も高く、ほっそりとしていてスタイルも良い。一応うちの学校の制服を着ているから生徒なことは間違いない。……芸能クラスの人かな。
現実離れした姿。まるで王子様のようだ、と一瞬思った。
そう、変わり者の王子様。例えば死体を愛するグリム童話に出て来る王子様とか。
そこまで考えて首をふる。嫌な方向に考えてはいけない。