‐時間:21:50 場所:体育館

俺と軍服男は長い間殴り合い、お互いボロボロになっていた。身体中に痛みがあった。だが、それも感じないくらいに楽しんでいた。

「……はぁっ……。」

「はっ……はぁっ……。」

2人は睨み合い、張り詰めた空気になった。お互いに集中し、相手の隙を伺っている。

「……。」

「……。」

フッ……

軍服男が先に動いた。疲労はMAXのはずなのに、男は音もなく無駄の無い動きで、拳を俺の頬めがけて殴ろうとした。

バチィッ……

俺は右腕で攻撃を防いだ。そして、

「くらぁっっ!!」

ハイキックを、渾身の一撃を男の頭に。

バキッ……

「ぐっ……は……。」

軍服男は、仰向けに倒れた。

「……はっ……はぁっ……はぁっ……っ……。」

俺も集中力が切れ、後ろにフラつき座り込んだ。

「……はぁ……ははっ……俺の……負けだなぁ。……楽しかったぞ……九条……。」

「っ……こっちも……楽しませて……もらったぜ……っ……はぁっ……。」

俺も軍服男も、肩で息をするほどに弱っていた。俺は、ヨロヨロと立ち上がり、男を睨んだ。すると軍服男は半身起き上がり、ハンドガンを持ちこう言った。

「はぁっ……はっ……お前ら……裏切られてるぞ……。」

バンッ……

男はそう言い残すと、自分の頭を打ち抜き自殺した。

『裏切られてる……?』

その言葉が何度も頭に反響した。まるで、俺らに忠告するように。