教室へと続くまっすぐな廊下を、山本君の後ろなんかじゃなくて、隣を歩く。


きっとほとんどの人が、体育祭の片付けが終わったらすぐに教室へと帰っていったのだろう。


さっきまでにすれちがったのは数えられるほどで、騒ぐ声が遠くの方から聞こえてきている。


静かな空間。でも、この沈黙は、嫌いじゃない。


それでも、静かになれば、色々と考えてしまうもので。


ふと、今は思い出したくなかった、小さな、黒い感情が脳裏をさっと横切った。









――――……


あのとき。体育祭の途中に見た、校舎裏での優菜ちゃんと山本君のツーショット。


真剣な表情の山本君。


その後の楽しげな二人。



胸のうちを支配した、あの、黒い感情が、一瞬だけちらついてきて、私を惑わそうとする。


でも……





足を止めて、ゆっくりと目を閉じてみる。


「ん、何?」


心地よく響く山本君の声によって、黒い感情は一気にどこかに飛んでいった。


まるで、掃除機か何かですーっと吸い込まれたみたいに、跡形もなく。


私は、山本君の顔を見つめたまま、自分に質問する。





―――あのときのこと、詳しく聞きたい?




答えは、多分……