ぼーっとする頭の中。


ゆっくりと、山本君の顔が離れて行くのが分かる。


今のって……き、ききききっ……!?


顔を真っ赤にしてあたふたしている私がおもしろかったのか、山本君はふっと息をこぼすように笑った。


くるりと、私に背中を向けて、


「教室戻るぞ」


と言う山本君。


いつの間にか離れてしまった手。歩いている山本君と、立ち止まっている私。


なんだか、これからいなくなる山本君と私の距離みたいだ。


どんどん距離が大きくなっていく。


それなら———、


「待ってー!」


その背中を追いかけるのみ、だ。


開いてしまった距離なんて、私が走って埋めてみせる。


離してしまった手だって、つなぎたくなったらつなげばいい。


山本君と離れたくないって気持ちは、大きいよ。でも、それよりも大きいものが、私の中にはある。


山本君が好き。


君へのキモチはね、離れたくないっていう気持ちの、何倍も、何十倍も、大きいのだから。


だから、一緒にいることのできる今を、大事にしていこう。


こうやって、並んだ二つの身長差のある影を見つめられる日々を大切にしよう。


そうすれば、お別れのときが来ても、私は笑顔で言うことができると思うんだ。





「またね」





———って。