君へのキモチ

ゆっくりと、スニーカーからクラスの皆のほうへ視線を向ける。


さっきまではよく、見てなかったから、気づかなかったんだけども。


「っ、」


やっぱり、皆は優しい。


優しいから、これから離れてしまう私たちのことを思って、そんな顔をしているんだよね。


笑顔をうかべてくれているのかもしれないけれど、私は、心配そうな表情が隠れている気がするんだ。


ただの、私の、勘だけれど。


無意識のうちに山本君の手を握る自分の手に力が入る。


山本君の視線がゆっくり私に向けられて、ちょっとびっくりしたような顔をしたから、もしかしたら私は、泣きそうな、ひどい顔をしていたのかもしれないな。


さっきまで山本君と絡んでいた男子たちも、いつの間にか押し黙っていて、体育祭で優勝したクラスとは思えない、何とも言えない空気が漂っていた。


この沈黙は、私がなんとかしなきゃ……。


「あ、のっ……」


「お帰り」


へっ、と言う間抜けな声が出る。


私をさえぎったその声は、今まで私を何度も助けてくれた、大好きなあの声。


「もーう、人数足りないからから心配したんだよー?」


続いて、少しおどけたような、明るい大好きな声も聞こえて。


「優菜ちゃん、……美玲ちゃん、……」


柔らかい笑顔をうかべた二人の名前を呼ぶ。


すると、クラスメイトの皆も、


「そーだそーだ、どこ行ってんだよ!」


「とりあえず教室でぱーっと騒ごうぜ!」


「今日の主役がいなきゃ、胴上げもできないしねーっ」


「芽瑠ちゃんも、実行委員お疲れさまー!」


なにかわからないけれど、こみ上げてくるものがあった。


優菜ちゃんの、美玲ちゃんの、皆の、温かい言葉が胸に突き刺さるようで、それでいて胸のうちの不安を溶かすようで。


なんだか、泣きたくなってしまった。