君へのキモチ

えっ、えぇぇえ!今なんて…?


『メルチャントワタシ、ジュンバンカワルンデ』?


それってつまり、バトンを渡す相手が長瀬君じゃなくて……


「いやっ、いやいやっ!む、無理です!だって……」


だって、何?と続きをうながしてくる安藤さん。柄にもなくにやけてます。


私一人での反論は困難だと思い、誰か加勢してくれる人はいないかとあたりを見渡すも、誰一人として助けてくれる人はおらず、なぜか皆もにやけていることに恐怖すら感じた。


まさかとは思うけど、安藤さん……


私が、その…や、山本君にバトンを渡すよう仕組もうとしてる?いや、あのクールビューティー安藤さんがそんなことするわけない、よね?


結局私の小さな反論はみんなに聞き入れてもらえず、皆に続いてテントを後にするほかなかった。


「はぁ……どうしよ」


嫌とかではなくて、その、緊張するというか。


それに、バトンパスの練習もしてないわけだし!ちゃんと渡せなかったらどうしよう……私足遅いし、その時点で山本君に迷惑かかるんじゃ……




「嫌なの、俺の前」




低い声を背中に受け、びくっと足が止まる。


大好きな、君の声が今自分にかけられていると思うと、緊張で指先にまで力が入る。


「バトン渡すの、長瀬のほうが良かった?」


「ち、違っ」


でも、君から言われた言葉は冷たくて、なんだか誤解をしているようだった。


誤解を解こうと勢いよく振り返って、私は息をのんだ。




………どうしてそんなに悲しそうな顔をしてるんですか?