長瀬君が、私とは反対に浮かない顔をしていたことに気づかないまま。


「じゃあ…私帰るね」


そっと席を立って、長瀬君に手をふった。


長瀬君はそんな私を見て、小さくうなずいた。


私は一度だけ振り返って手をふると、喫茶店を後にした。







「くっ……なんであいつを傷つけるんだよ、一哉……っ」


長瀬君がどんな思いで、私を迎えに来たかなんて知りもしなかったよ……。