頑張れ、私っ。


『一哉君』、『一哉君』、『かず……』


「か……、」


目が合うと、どっと心拍数が上がる。


「……?」


山本君は不思議そうな顔をしている。


「か……ぜっ!」


「は?」


あ……逃げてしまった。


「風邪……ひかないように気をつけてくださいっ」


私は、なんでこうなんだろう……。


山本君は、なんだかすねたような表情をすると、ぶっきらぼうにうなずいて今度こそ帰っていった。


「……ふぅ」


私は山本君が見えなくなると大きく息をついて、その場にしゃがみ込んでしまった。


「私…ダメダメすぎる……」


勇気が出せなかった自分がイヤだった……。


「よしっ!次会うときこそっ……名前で呼ぶぞっ」


落ち込んでいたのはたった10秒。ポジティブなのが取り柄ですっ!


私は立ち上がると、えいっと自分に喝を入れて家に入った。