溺れ愛

そのまま藤真由美は暫く現れなかった。


だから、忘れてしまったんだ。


・・・幸せすぎて。


ちぃがやっと俺のものになったんだから。


幸せすぎて、余計なことを考えていられなかった。


・・・これは完全に俺の落ち度だ。


大切なモノを壊す。


それがちぃのことだってことに気が付いたのは、再び藤真由美が俺の前に現れた時だった。



『良平先輩♪タイムリミットですヨ?』



ちぃが家に来るというからそれまでの暇つぶしに図書室で課題を済ませていたら、後ろから声が聞こえた。


久しぶりのちぃとの約束を邪魔されるなんてたまったもんじゃないね。



『良平先輩が思い出さないから・・・あの女はボロボロ♪ウフフッ』



勢いよく振り向いて目が合った藤真由美の視線の鋭さにドクンと心臓が跳ねたのを感じた。


嫌な、予感がしたんだ。



『ちぃに、手を出したのか・・・?』

『ウフフッ♪どーでしょうネ?すぐに分かるんじゃないかナァ♪』



ぐっと拳を握りしめた時、胸ポケットにいれていた携帯が震えた。



『ヨウ!?』

『良くん?実は姉さんが・・・階段から落ちて骨折して即入院になったんだ』



電話の相手はちぃの弟のヨウ。


電話口で告げられた言葉にハッとした。


壊すって・・・こういうことだったのか?


ちぃに直接手を下すって?


ふざけやがって。



『すぐ、行く。ちぃのことよろしく』

『分かってる。病院で姉さんと待ってるから』