溺れ愛



それに、武くんの好意は私を通して違うところに向いてる。


きっと、本当に好意を伝えたいのは私じゃなくて・・・乃ノ香ちゃん。


お互いを思い合っているのに、その気持ちに嘘をつかなくちゃいけないなんて辛いよ。


武くんに大嫌いだと言った乃ノ香ちゃんの表情が頭を過って切なくなった。


私の手を握った武くんは一体どんな気持ちだったのかな。



「千愛?」

「あ、ごめんなさい。色々考えちゃって・・・」



どうしても考えずにはいられないです。


武くんと乃ノ香ちゃんのこと。



「まぁ、丁度いいのかもしれないわね」

「え?」

「あいつと距離をおくのは丁度いいって言ってんのよ。千愛の後ろめたさも緩和されるだろうし、イジメのほとぼりもさめるかもしれないしね」

「うん・・・」

「ただし!」



ズイッと弥生ちゃんの顔が近づいてきた。



「隠すのはダメよ?ちゃんとあいつにも理由を言いなさい」

「それは・・・」



出来れば伝えたくない。


武くんのことに関しては良平くんもきっと分かってくれると思うです。


だけど、イジメの事については言えない。



「千愛なら分かるはずよ?あいつがどれだけ千愛のことを大切に思ってるか」

「そう、だよね」



大切にしてくれているからこそ隠しておくのがベストだと思っていたけど、違う・・・。


良平くんに隠していたことがいつかバレてしまったときに傷つくのは良平くんだ。



「ちゃんと話してみるです」

「いい子ね、千愛」



ぐしゃぐしゃと私の頭を撫でまわしてからニカッと笑った弥生ちゃんは、本当に私のお姉ちゃんみたい。



「今日の病院の帰りに良平くんのところに寄って話てみる」

「そう。大丈夫よ、千愛のことならちゃんと分かってくれるはずよ」



うじうじと同じことばかり考えていても仕方ないもんね。


ちゃんと、話そう。


良平くんが大好きだからこそ、隠し事はしちゃダメだよね。