溺れ愛




私がそのままレシピ本を見つめていると・・・


ガタッ


入り口付近で音がして、武くんがそこに立っていた。



「見たのか、千愛」



私の手元にあるレシピ本に気づいたみたい。



「あの、勝手に・・・ごめんなさい」

「いや、いい」



武くんはゆっくりとこっちへとやってきてベッドに腰掛けた。


聞いていいのでしょうか・・・。


乃ノ香ちゃんとのこと。



「ののは妹だ」



私が言葉を発する前に武くんがそう言った。


武くん・・・。


やっぱり、乃ノ香ちゃんのことが好きなんだね?


だからそんなに苦しそうにしてるんだ。



「武くん・・・」



きっと、乃ノ香ちゃんも武くんのことが好きなんだよね。


好きだから苦しい思いをしてるだなんて・・・。


切ないよ。


二人の事情を深くは分からないけど、何とかしてあげたいって思った。


とはいえ、何も出来ないのが歯がゆいです。



「俺が好きなのは、お前だ千愛。お前なんだよ」



武くんがぎゅっと私の手を握ってそういった。


まるで自分にそう言い聞かせるみたいに言っている武くん。


なんとなく、分かってしまったの。


武くんが私を好きだという理由。


私と乃ノ香ちゃんが少し似てるからでしょ・・・?



「うん・・・。武くんが好きなのは私だね・・・」



縋りつくように握られた手を振りほどくことなんて出来なくて。


私は武くんの手を包み込んだ。


これが正解なのかどうかは分からないけれど・・・今はこうすることで武くんの気持ちが落ち着くのなら・・・。


これでいいはず・・・だよね?