溺れ愛




「行ってきます、ママ!」

「行ってらっしゃい!良平くん、ちーちゃんのことよろしくね?」

「おまかせください、紗絵さん」



二人で一緒に家を出て、高校まで歩いていく。


自転車通学の申請をだしているんだけど・・・自転車だと良平くんとお話があまり出来ないから、ほとんど歩きで行く。


一緒にする登下校は、私にとってとっても大切な時間なのです。




「ちぃ、こっち」



良平くんに腕を引かれて、さっと場所を入れ替えられる。


私が車道側を歩くと、必ずこうやって交代してくれるの。


あんまり手を煩わせてはいけないと思ってなるべく内側を歩くようにしてるのに。


たまに忘れちゃうです・・・。



「ありがとう」



掴まれた腕が、なんか熱くて・・・その熱が体中に回ってしまう。


あんまり、ドキドキさせないでほしい。


良平くんは知らないかもしれないけど。


いつまでたっても・・・良平くんの男っぽいところに私の心臓をバクバクさせられちゃうんだよ?


こんな些細なことですら、ね。



「ちぃに何かあったら・・・俺は生きていけないよ」



優しい笑顔でそういう良平くん。


もぅううう!!


本当に、ダメですってば!!


さらっとそういうこと言うんだもん・・・。


顔、熱いよぉおおお!!



「顔が真っ赤だけど、どうかした?」



はにゃあああ!!


良平くんのか、かかか顔がドアップ・・・!?



「な、なんでもないです!!い、行こう!」



これ以上見られたら・・・溶けて蒸発しちゃいそうだよ、私。


少し落ち着こうと良平くんよりも一歩前を歩く。



「ははっ!本当・・たまらないよね、ちぃのそういうとこ」



あれ?



「今、なんか言った?」



後ろでボソッと声が聞こえたような気がして振り返れば



「いや?何も言ってないよ。それより前向かないと危ないよ」



ニコッとそう言われた。


・・・悩殺、です。