溺れ愛


タワーマンションを出れば、太陽は完全に姿を隠して代わりに月が夜道を照らしてる。


遅くなっちゃったな。


早く帰んないとね。


って言っても帰るのは高木家になんだけどさ。



「懐かしいなぁ…」



目についたのはちぃとよく来てた家の近所の公園。


あるのはベンチと滑り台とブランコだけの本当に小さな公園だ。


もう夜だから、誰もいない。


昼間とはちょっと違う顔をしてるね。


なんとなくまだ帰りたくないような気分だし、寄ろうかな。


ベンチに腰をおろして空を見上げた。


良い天気だから星が見える。


ちぃに見せたら目を輝かせて興奮しそうだね。


そんなちぃを想像するだけで、顔が綻ぶ。


早く、会いたい。


目を閉じて、想像するちぃの笑顔。


想像だけでこんなに愛しいのに、会ったら大変かもね。


手離せなくてさ。



ぎゅっ…




「!?」





不意にベンチの後ろから回されたか細い腕。



ぎゅぎゅっ



力強くなっていく……。


俺の頬に触れる、柔らかい髪。


鼻を掠める、甘い匂い。




「グスッ…ッッ」




聞きなれた、泣き方。


振り向かなくたって分かる。




「ちぃ」




俺の大切なお姫様。