溺れ愛



授業を終えて向かう先。


タワーマンションだ。


昨日藤真由美と約束したからね。




「良平センパイ、来てくれたんですネ」

「約束はちゃんと守るよ」

「どうぞ、座ってくだサイ」




明らかに今までの藤真由美と雰囲気が違う。


妙な猫なで声じゃないし、絡みついてこない。


ソファに座って向かい合う。


向かい合った藤真由美から伝わってくるのは、緊張だ。




「真由美は、良平センパイのことが好きです…。昔から、ずっと。小さいときにパーティーで会った時から…」




きっかけはやっぱり幼いころに出会ったパーティーだったんだね。




「あの時、良平センパイが遊んでくれて嬉しかった。センパイは覚えてないかもしれないけど…。パパとママはいつも忙しくて、真由美は寂しかったんデス。真由美の相手をしてくれるのはお手伝いさんだけ。愛されてる、なんて全然思えなかった」




制服のスカートをギュッと握って俯きながら話す彼女が、まるで小さい子供のようにみえた。




「そんなときに、あのパーティーで良平センパイに出会ったんデス。寂しくて泣いてた真由美の手を引いて、一緒に遊んでくれて…。髪を可愛く結んでくれた」




少しだけ、思い出した。


パーティー会場の隅っこで泣いていた、自分より小さな女の子。


なんだか放っておけなくて、中庭で一緒に遊んだんだよね。


年下の女の子と遊んだのは初めてだったから、どうしていいか分からなくて、いつもちぃにしてるみたいに、髪を結んであげたんだっけ。


あまりに嬉しそうにするから思いの外可愛くて…妹がいたらこんか感じかなって思った。


それで、こう言ったんだ。




「君と家族になれたら楽しそう」

「良平センパイ…思い出したんですか??」




唐突に口から出た言葉。


やっぱり、そうだね。




「確か、俺が君に、真由美に言った言葉だね…」


「そう、デス…。それが嬉しくて嬉しくて、いつか愛して貰えるお嫁さんになりたいって、そう思って…。家の中で居場所がなくなるほど、その気持ちが強くなっちゃったんデス…。一度しか会ったことなかったのに、良平センパイを心の支えにして、依存したんです。ゴメンなさい…」