溺れ愛



いつもよりも口数の少ない藤真由美。


これ以上何をしようっていうんだか。


でもまぁ、探りをいれたいし、大人しく藤真由美の後をついていく。


どこに向かってるんだかは分からない。


パーティー会場のホールを出ている時点で、怪しけど。



「ねぇ、真由美」

「なんでス??」

「どこに向かってるの?」



なんて、聞いてはみるけど。


乗せられたエレベーターの光るボタンは最上階だ。


ロイヤルスイート…。



「ある人の楽屋みたいなものデス。気楽にしててもらって良いですヨ♪」



ロイヤルスイートを楽屋扱いなんて1人しかいないだろうね。


このパーティーの主催者であり、




「さぁ、どうぞ!パパ~入るヨ♪」




藤真由美の父親であり、藤グループのトップ。



扉を抜けて、まず目にはいったのは一面ガラス張りの景色に背を向けて、デスクに腰を落ち着けている男性だった。


ハイブランドのスーツをビシッと着こなしていてる。





「君が、娘が随分執着しているという男か」




さすが大グループのトップだけあって鋭い眼をしてるね。


確か年齢は60くらいだったかな。


口髭がやたらニヒルさを演出している。




「…同じ高校の竹下良平です。本日は素晴らしいパーティーにお招き頂いてありがとうございます」


「私は真由美の父親の藤麟太郎(フジリンタロウ)だ」




デスクから腰をあげ、近づき、差し出された手。




「よろしくお願いします」




握りたくなくても、握らないといけないわけで。


というか、握らざるをえない威圧感。




「君の父親は…化粧品会社highwoodの副社長だったな」



highwoodはコウさんと父さんで立ち上げた会社のことだ。


こちらのことはリサーチ済ってことかな。




「私の目からみても、まとまりがよく、戦略にも長けている会社だ。highwoodはこれから更に大きくなるだろう。申し分ないな」




途端にはじまったのは、highwoodの評価…ではなくて俺の値踏みだろうね。



「君はみてくれも整っているようだ。真由美、この男ならいいだろう。好きにするがいい」