溺れ愛



どういう状況か飲み込めないまま、連れてこられたのはコウさんの仕事部屋。


約6畳程のこのスペースには、本棚、書類ケース、商品棚、そしてパソコンの乗ったデスクが綺麗に配置されている。


デスクの向こう側の壁には家族の写真がずらり。


紗絵さん、ちぃ、ヨウ……そしてちぃと一緒に写っている俺もいる。


確かこれは



「あ、懐かしいだろ。それ」



俺の視線の先に気づいたコウさんは、俺の視線を辿り写真を見つめている。

小学校の入学式の写真。


高木家と竹下家でお祝いにとご飯に出掛けたときのやつだ。



「帰りの車で、千愛と良平が手を繋ぎながら寝ちゃったんだよなぁ。あんまり可愛くて親4人でカメラ構えてさ」



そう言いながら懐かしそうに目を細めるコウさん。




「一生一緒にいそうだなって親たちで話してたよ。まぁ実際、今の今までずっと一緒にいるよな。千愛と良平は」

「…これからも」

「ん?」

「これからも、一緒にいたいと思ってます。もしかしたら…ちぃにはもう嫌われてるかもしれないけど」



たまらず、口をついて出た言葉。


本心であり願いでもある。



「ばーか。俺の娘は一途な子だよ…」



頭に手をおかれ、軽くクシャッとされた。



「泣き虫だけど、芯は強いよ…。紗絵譲りでな。で、良平は両親譲りでガッツがあんだろ。負けんな、相手がなんでもさ」



優しすぎるその笑顔と声は反則だ。


鼻の奥がツンとした。


俺がセンチメンタルになんてなってる場合じゃないのにね。


何一つとして、具体的に伝えていないのに、全てを飲み込んでいる気がしてならないコウさん。


……ん?


もしかして



「コウさん、全部知ってます?」