溺れ愛



「珍しい来客だな」

「相馬が恋しくて恋しくて、ね」



面会時間にギリギリ滑り込みセーフで病院にやってきた。


もちろんさよならをしたばかりのちぃの元になんていけるわけない。


・・・まぁ、相馬に頭下げにきたってとこ。



「キモイ事言ってんなよ。お前、千愛に何してくれてんだ」

「俺の前でも素できてくれるなんて嬉しいね。けど」



完全に敵対視されてるね。


こんなに凄まれるってことはもう知っているのか・・・。


ちぃのことを大切に思ってくれることについては感謝するけど、自分の女みたいに扱うとかやめてほしいね、本当。



「千愛って気安く呼ばないでほしいな」

「てめぇはもうそれ言う権利もないんじゃねぇの?」

「・・・俺がちぃをそう簡単に手放すと本気で思う?16年間育んできた思いがそう簡単に覆るわけないだろ。たとえちぃが俺の事を嫌いになっても、俺の事をどんなに憎んだとしても。ちぃが他の男と結ばれたとしても・・・一生変わらないよ。ちぃはいつだって俺にとって唯一無二のお姫様なんだから」

「あいつ、泣き腫らした目で寝ちまったぞ」

「そう・・・」



それはたやすく想像がついてしまうことで、一生懸命涙も声も抑えて泣いているちぃの姿が思い浮かぶ。


傷つけたくないのに傷つけて、泣かせたくないのに泣かせて。


自分への怒りがとまらない。



「頼みがあってきた。俺が、全て終わらせるまで・・・ちぃのことをよろしく頼む」



もう、これ以上ちぃを傷つけるわけにはいかないんだ。


ちぃが入院している間に藤真由美が何かしないとも限らない。


そのくらいの力を、彼女は持っている。



「頭をあげろ。聞くだけ聞いてやる・・・。全部話せよ」



相馬のそういう根が良い奴なところがちぃに気を許させるんだろうね。