「……そんなの知ってるよ。
今すぐ振り向いてもらおうなんて思ってねぇーし。
少しずつでいいから
俺を見て好きになってくれればいい。
待っているからさ」

照れたように頬をかく金本君。

「そんなの……いつになるか分かりませんわよ?
私は、簡単に落ちるような安い女ではありませんわ」

すると金本君は、茉莉華ちゃんを真っ正面から
抱き締めた。

「……そんなの知ってる。ずっと見てきたから
待つぐらい慣れてるし。幼馴染みを舐めるな!!」

ギュッと力を入れて抱き締めた。

「……本当……野蛮人なんだから」

そう言った茉莉華ちゃんの瞳には、
大粒の涙が溢れていた。

「どうやら、上手くいったみたいですね?
金本君と茉莉華ちゃん」

睦月君は、コクりと頷いた。

私達は、陰ながらそれを見守っていた。

心配したけど、どうやら大丈夫だったみたいだ。
良かった……本当に。

「さて私達は、お邪魔にならない内に
帰りましょうか」

そう思ったのだが
うっかり下に落ちてた缶を転がしてしまった。

カランと鳴り転がる缶。

あ、しまった!!

見ると2人と目が合ってしまう。

「何を……やっているのですの?咲良……。
睦月様まで」

ひぃぃっ……怒っているし!?

慌てて逃げ出す私と睦月君。
だが私達の手は、しっかりと握っていた。


END。