時雨side



「ま〜ことく〜ん、ちょっといいかな?」



「なんだよきめぇな、さっさと女のとこにでも行ってこいよ」



「つれないね〜。それよりさ、怜ちゃんと知り合い?」



「怜ちゃんなら知ってるぞ!親父が柊家のおじさんと仲が良いからよく怜ちゃんとも遊んだ。


けどあの女が怜ちゃんなわけがねぇ、同姓同名ってのが腑に落ちねぇけど」



へぇー、
同姓同名なんてそうそう居るわけないし、どう考えても真琴の知ってる怜ちゃんとやらがきっとあの柊 怜なんだ。



西園寺みたいな大手の会社ならば、柊グループと関わりがあってもおかしくはない



それに真琴の顔を見たとき、この部屋に来てから一切変わらなかった表情がほんの少し崩れた気がしたから間違いじゃない



「なんで、違うと思うんですか?」



慧が話に参加するとわな
きっとさっきの会話の主導権を握りきれなかったのが気にくわないのか



「なんでって、怜ちゃんはもっと優しい感じでずっと笑ってて暖かくて、あんな目が死んだ冷徹女とは真逆の女の子だ!」



「べた褒めだねぇ〜。まさか真琴の初恋だったとか?」



まさかね、あんな容姿端麗の怜ちゃんをみてブスなんて口走る馬鹿が、恋なんてな。



「.....るせぇ」



え?は?何こいつ顔赤くしてんの、まじかよ。うわー、くそ興味ねぇ。それに、女の事好きになるなんて俺には一生わからない感情だ



ほんの少し崩れた彼女の表情に、言いようのない高揚感に襲われた。



この時俺は、このゲームに負けるだなんて、一ミリも思っていなかった。