8月の雪



「祐、悪いんだけど、地下に行ってお茶と紅茶買ってきて?」


全然悪いなんて思ってない態度で、美紗は俺に財布を差し出す。


「…ったく、しょうがねぇな〜」


呆れながらも、すぐに個室を出て地下に向かう。


平日ということもあり、
そんなに客はいないようで、俺はすぐに言われたものを買えた。


「あ〜また階段かよ。
美紗に合わせると大変だな」


とは言ったものの、エレベーターは今いる場所の逆。


面倒臭がりの俺が、そんなことをしてまで乗りたいとは思わない。



はぁ〜、とため息を漏らしながら、来た道を戻ろうとした。




でも、もしこの時楽をしたいがために、俺がエレベーターを使っていたら、


俺と君が出逢うのは


もうちょっと後



そしてたぶん…


いや絶対に始まらなかった









恋なんて…