「やばっ!今日、家の手伝いがあるんだった」


赤く腫れた目を前髪で隠し、鞄を持って教室を出ようとした。


「金井さんっ!」

「……だれ?」

「あっ僕、同じクラスの花本棗で…す。
よかったら、これ使ってください」

「えっ!ちょっ??」


それだけ言うと、赤い顔を隠すように、




花本 棗《ハナモト ナツメ》


は、教室を出てった。


「変な人…」


一パサッ…


少し濡れたハンカチを使おうとすると、小さな紙が落ちた。


「…“相談ならいつでも乗ります!”
何これ!!」


可笑しくて笑いが込み上げてきた。

久々に笑った気がする。


ねぇ…律は今、


笑ってる?




この時はまだ気がつかなかった。


彼との出逢いが、あの人の再会を促していることに一…