8月の雪




「何やってたの?」


急いだつもりなのに、
昇降口には、美紗が既にいた。


「お前が早いんだろ?」


ガタンッ、と簀の子の上にローファーを落し、急いではきかえると、
俺を待たずに歩き出してる美紗の後を追う。


「お前なぁ〜…先に行くことないだろ?
ちょっとは待てよ」

「いいじゃない別に。
あんた足速いんだから、元陸上部さん?」


皮肉たっぷり睨み付ける美紗を、少し軽目に叩く。


「っで、何で入院してるのそのこ?」

「…昔から体弱くて、いつもの検査入院、とか言ってた」


山道を上りながら、淡々と答える美紗を、何でだか変だと思った。


まるで、用意されていた台本を読んでるような、
そんな感覚。


「…着いたわよ。」


話していると早いもので、
町にただ一つだけある、
おっきな病院に着いた。


俺は生まれてから病気にかかったことがないから、病院なんて慣れてない。

そんな俺を知ってか知らずか、美紗のペースはさっきよりもゆっくりと歩いている。



「すみません、村上芙由の病室はどこですか?」

「はい、すぐに確認しますね…」




村上 芙由《ムラカミ フユ》




どうやらそれが、美紗の友達の名前らしい。