「何やってたの?」
急いだつもりなのに、
昇降口には、美紗が既にいた。
「お前が早いんだろ?」
ガタンッ、と簀の子の上にローファーを落し、急いではきかえると、
俺を待たずに歩き出してる美紗の後を追う。
「お前なぁ〜…先に行くことないだろ?
ちょっとは待てよ」
「いいじゃない別に。
あんた足速いんだから、元陸上部さん?」
皮肉たっぷり睨み付ける美紗を、少し軽目に叩く。
「っで、何で入院してるのそのこ?」
「…昔から体弱くて、いつもの検査入院、とか言ってた」
山道を上りながら、淡々と答える美紗を、何でだか変だと思った。
まるで、用意されていた台本を読んでるような、
そんな感覚。
「…着いたわよ。」
話していると早いもので、
町にただ一つだけある、
おっきな病院に着いた。
俺は生まれてから病気にかかったことがないから、病院なんて慣れてない。
そんな俺を知ってか知らずか、美紗のペースはさっきよりもゆっくりと歩いている。
「すみません、村上芙由の病室はどこですか?」
「はい、すぐに確認しますね…」
村上 芙由《ムラカミ フユ》
どうやらそれが、美紗の友達の名前らしい。

