8月の雪




「遠山…君、そこの本は一番ね」

「あ…あぁ…」


図書委員になってから三週間。

何とか話せるようになったけど、
まだぎこちない。


それがなぜだか笑えて、
俺は、本を整理しながら、自分の顔がゆるまないように必死だ。


「金井ー…そこの二番取って…?」

「あっうん………はい」

「ありがっ…」


一ドキンッ


瞬間、俺の胸はうるさいほどなった。

それが、金井に聞こえるんじゃないか、
なんて緊張していた。


本をもらおうとしたとき、金井の手が触れた。


本はドサッ、と床に落ち、
気持ちいいほど涼しい風が、頬を撫でる。


「あっごめん…」

「いや、俺こそ。」


本に付いたホコリを落し、手が触れないようにして渡された。


本棚に本を入れ、黙々と仕事をする。


話すと言っても、
事務的な話ぐらいしかしない。

まともな会話が成り立たない。


俺は黙って本をしまいながら、図書カードにハンコを押す金井を、遠目で見ていた。