かぐやは手を伸ばして白虎の心臓に力を送った。


全身に治癒力が回るように全身全霊を込めて


しかし、かぐやは感じていた。


死の匂いを


こういう場合は決してかぐやの力では助けられない。


涙があふれ出る


「いいんだ。・・・俺はいいから、泣くな」


白虎は自分の運命を悟ってなお、


かぐやのことを心配していた。


いつもは鈍い銀司も状況を呑み込んだのか声が震える


「お前は死なない、死ぬはずがない!」


「一緒に帰ろう・・・白虎」


かぐやも涙を流しながら必死で力を送り続ける


「ああ、俺はいつだってお前たちとともにいるよ・・・」


白虎はそう言うと呼吸が弱まっていき、ついには止まった。


嫌だ、こんなの嫌だ!




『月の精霊王、全部あなたのせいだ


父も母も殺し大切な人まで私から奪った。


私は人間になる


あなたが一番嫌った人間に


あなたは人間を争い好きな愚かな生き物だと思ったようだが


愚かなのはあなたのほうだ。


こんなに強くてきれいな心を持った人間を知らずにいたあなたのほうだ


私は人間のほうがいい。


辛いことから顔を背け、正面から見ようとしない月の者たちよりも


困難に立ち向かい、大切な人を命を懸けて守る人間に!!』



かぐやはいつの間にか叫んでいた。


満月の浮かぶ夜空に向かって声の限りに叫んだ。