「かぐらはいつも何考えてるのかわからない奴だったな。ちっとも心を開かない。冷たくて刺々しくて、いつも一人ぼっちで。里のやつらのかぐやに対する態度を見ればそうなるのも不思議じゃないが」


「ガキの頃、殆ど口をきかないし、髪も短かったからかぐやのこと男だと思ってた」


「あー、実は俺も。あいつ男勝りだったからな」


「とってもいい子なんですけどね」


箔先生が口を挟むと二人は頷いた。


「かぐや、こんな目にばかりどうして合うんだよ」


銀司がかぐやの手を握ると、かぐやの荒々しくなっていた息遣いが心ばかり落ち着いたようだった。


「なぁ、里長がおまえとかぐやを婚約させるって話、白紙に戻ったらしいがどうするつもりだ」


「長老たちも皆反対したらしいし、里の殆どのやつらも知ればそうするだろうな」


「銀司くんは次期里長ですからね、その婚姻ともなると皆慎重になるのでしょう」


「おまえはどう思ってるんだ?」


「他のやつらの意見なんて関係ない」


銀司の言葉には力がこもっていた。


グールな一匹狼的な白虎とは対照的に、銀司の女にだらしないところは、昔荒れていたころのまま続いていたのだが、それもいつの間にかなくなったのは周囲の者の色々な憶測を呼び、噂の種になっていた。


だが、里長を始め近しい人間だけが、その理由を推測できただけだった。


「そうか」


「でも、お前も好きなんだろ?」


ふたりの間に沈黙が走った。


「お前のそれとは違うさ」