『ごめんなさい、その通りよ。あなたは漆黒の炎を消すために命を落とすことで頭がいっぱいだったから、そうさせてもらったの』


『そんな・・・』


『あなたには辛い思いをさせてしまってごめんなさい。私たちの手で守ってやれなくてごめんなさい。でも、大切な人ができたのね。その人と幸せになりなさい』


『漆黒の炎を消さないと大勢の人が力を増した魔物に苦しめられ続けるの。そんな状況で自分だけ幸せにはなれない』


『漆黒の炎にあなたが身を焼かれれば、炎は消えると信じているのね』


かぐやの母は悲しそうに言った。


月の精霊王の流した偽りの噂。


それは、かぐやの母とその夫となった人間を殺し魂をそこへ封じた。


激しい怨念は魔物に力を与え、この世界の人々を苦しめ続ける。


漆黒の炎を消す方法はただ一つ


かぐやが漆黒の炎に身を焼かれること。


しかし、母はそれは真実ではないとかぐやに打ち明けた。


月の精霊王はかぐやの母がかぐやを逃がしたことに腹を立て


漆黒の炎の噂を聞きつけたときに


漆黒の炎を消すべく姿を現すだろうと考えた。


そして、噂を真に受けたかぐやが漆黒の炎に飛び込むと


かぐやの力を得て漆黒の炎はますます激しく燃え盛ることになる手はずだ。


こうしてかぐやを殺し


この世界も魔物を使って滅ぼすことで


月の精霊王の目的が達せられるというわけだ。


その様子をかぐやの母と父にも見せつけるため


二人の魂は魔物の中に封じたというのだ。