かぐやは夢を見ていた。
何度も何度も同じ夢だ。
漆黒の炎の前で魔物と戦う夢。
もう一息の所でいつもやられてしまう。
このままでは使命が果たせないと拳を地面に打ち付けて打ちひしがれる自分。
苦しく、悔しく、抗えない運命。
漆黒の炎は勝ち誇ったようにゆらゆらと炎を躍らしてその様を見ている。
だが、苦し気なうめき声が炎の中から聞こえる。
『かぐや・・・・かぐや・・・』
『お母さん?お父さん?』
かぐやは不意に呼びかけてみた。
すると、荒々しく牙をむきだして敵意をみせつけていた夢の中の魔物が
美しい銀色の長い髪を持つ女性と優しそうな眼をした男性に姿を変えた。
『かぐや、ここへ来てはいけないと以前言ったのに、また来てしまったのね』
女性は悲し気に言った。
『あなたが炎に飛び込んでも炎は消せない、これは月の精霊王の罠』
『あなたの望む場所で幸せに暮らす方法を探しなさい。あなたを大切にしてくる人がいる場所へ帰りなさい』
『魔物はお父さんとお母さんなの?』
『そう、私たちの魂は漆黒の炎ではなく、さきほどあなたに見せた魔物の中にあるわ』
『じゃあ、以前ここへ来たのに記憶を失って明星の里へ帰りついたのもお母さんたちの力なの?』