かぐやの月

隣に座っただけで満足そうな笑みを浮かべていた。


「彼と喧嘩かな」


「喧嘩ってわけでもないけれど、怒らせてしまって、銀が部屋を出て行ってしまったの」


「ふぅん。謝りたくて探しに出てきたってわけか」


「すぐ追いかければ良かったのかもしれないけれど、私どうしたらいいのかわからなくて。そうしたら、白虎が思っていることを言葉に出せばいいって言うから」


「へぇ、彼そんなアドバイスくれるんだ。白虎だっけ、彼も君のこと好きそうなのに、二人のことを応援しちゃうんだ」


「白虎の言葉はいつも正しいの。たとえ厳しい事を言っていてもその裏には思いやりがる。だから、私は彼の言葉を信じる。思い返せば幼い頃から助けられてばかりだ」


「かぐやちゃんは半人だよね。それだけで辛いことが多かったはず。だけどそんな仲間がいる君が少し羨ましく思うよ」


ああ、この人はやはり自分に課せられた重い使命に苦しんでいたのだ。


そして、今やっと自分の進むべき道を見出すことができ安堵しているのではないかと


かぐやは感じた。


「美乃さん、食事の時、話し相手に来てくださいました」


「助けられた礼に行きたいが、俺たちがかぐやちゃんたちを酷い目に合わせたからな、顔を出しても良いかどうか頭を抱えていたよ」


「彼女は鞍馬のことをすごく慕っているようだったけれど」


「黒鳥人は強い子孫を残す本能が強いし、そういう仕来りが昔から続いているんだ。美乃もまたそういう本能で俺の嫁になりたいと言っているのだ。だが、俺は指名とか仕来りとかそういうのに少しうんざりしていてな」


鞍馬はひと呼吸してから続けた。


「もうずっと前から自由になりたかった。なんでもいい、自分の意志で決めたかった」


鞍馬は寂しげな笑いを浮かべていた。


「あ、誤解しないでね。かぐやちゃんを嫁に欲しいと思ったのはそういったことへの反発じゃないよ。初めは黒鳥人の女人より強い子がどんな子か興味が沸いただけだったけど、君を見たとき惹かれたんだ。君は美しかったし、どこか自分と似たものを感じた」