かぐやの月





「あいつは信用できない」


今夜使っていいという部屋に通されると銀司はドカッと腰を下ろすなり文句を言った。


かぐやには別の部屋を用意してくれるといわれたが


銀司が断固反対したのだ。


かぐやを一人きりにしておけないというので


結局三人で同じ部屋を使うことになった。


「あいつは大きな力を使えるのはたったの一回、それも命をかけなければならない。迂闊なことはできないさ」


白虎も壁を背にして座った。


顔には出さないが疲れはたまっているはずだ。


「多分、鞍馬は本心から言っていると思う。自分に課せられた使命に苦悩し、どこで命を投げ出すべきか考えあぐねているような気がした」


「多分って・・・俺にはただのイカレタ野郎にしか見えなかったけどな」


「それにね、漆黒の炎の近くには魔物がいる。前回私はそれに阻まれた。私一人の力ではかなわないほど強い力を持った魔物だから、戦う人間は多いほうがいい。魔物の気を引くことができればその間に私が炎へ近づくこともできる」


かぐやがそう言うと銀司は怖い顔をした。


「かぐや何度も言うが、漆黒の炎へ近づくのはおまえが飛び込まなくても炎を消せる方法が見つかってからだ」


「自分の娘も孫も殺すような月の精霊王がそんな方法を残すはずがない。漆黒の炎は殺し損ねた私を消すためのもの。それに時間もない。鞍馬たちの山の話も聞いたでしょ」


「あいつの名は出すな!」


銀司が声を荒げた。


「かぐやは俺が好きだと言ったよな、なら態度で示せよ。好きなやつの目の前でみすみす死ぬな。俺のために全力で生きようとしないおまえとは一緒にいたくない」


銀司は部屋の戸を荒々しく開けてどこかへ行ってしまった。