「おい鳥人間、大丈夫か?」


銀司が受け止めたのはつややかな真っ黒い羽を背中に生やした美しい女人だった。


女人は羽と同じくらいつやのあるしなやかで真っ黒な髪を耳にかけると銀司に顔を向けた。


「は・・・はい、もうダメかと。助けていただきありがとうございました」


銀司は自分の腕から離れた黒鳥人の女人を見て驚いた。


身の丈6尺3寸もある銀司よりもまだ女人のほうが大きいのだ。


視線が上向きになって話すことなど、ほぼない妙な感覚を抱きながら素朴な質問をした。


「お前たちこんな魔物の巣くう山で何してたんだ?」


「私は黒鳥人の美乃と申します。実を言いますと・・・」


女が事情を話そうとしたとき、


空からバサッと黒鳥人の仲間らしきものたちが羽を羽ばたかせながら降りてきて


いきなり銀司の腕を掴んで空高く舞い上がった。


見れば白虎もかぐやも同じように腕を掴まれて空高く運ばれている。


「いきなり何をする!俺を下へ降ろせ!」


「この高さでお前の腕を放せば死ぬがよいのか?それが嫌なら大人しくしておくことだな」


「お前たちの仲間を助けたというのにその礼がこれか」


「うるさいやつだ。あれは我が一族の試験。魔物を殺せなかった美乃の失態というだけのこと」


「何の試験だったか知らないが、それが俺たちに何の関係がある!」


「それは鞍馬様がお決めになることだ」


それ以上、銀司が何を聞いても黒鳥人の女人は何も答えなかった。