死んだのは4寸ほどの目のない毛の塊に手と足が生え、異様に大きな避けた口を持つ魔物だった。


すぐに左右から同じような魔物が飛びかかってきた。


白虎隊の里守が応戦するが、四方八方から悲鳴が聞こえるため全員が同じ場所に留まるわけにはいかない。


進むごとに16名いた里守も数を減らしていく。


敵か味方か、血しぶきがあちらこちらで上がる。


先頭をいく白虎は周りに目を光らせ、人々に襲い掛かる魔物を仕留め、逃げ道を確保している。


かぐやはただただ、その後ろを走った。


自分もやらなければ、そう思う気持ちはあるものの刀を握れなかった。


森の入り口にそびえ立つ木々よりもまだ背の高いムカデの化け物みたいなのが湧いていた。


狂骨魔というやつだろう、銀司がその硬い顎を貫かんと高く飛んで大剣を振り下ろすところだった。


「立て、先導するから一緒に戻るぞ」


白虎の声に目を向けると、近くに里の者7,8人が身動き取れなくなって固まっていた。


「あぁ」


血の気の引いた顔からうめき声のようなものを出して、里の人が歩き出そうとしたとき、また魔物が襲ってきた。


とっさに標的になっていた小さな男の子をかばって覆いかぶさった。


ドシュッ


青黒い血しぶきを頭から浴びた。


「剣を抜けっ!」


白虎は怖い顔でかぐやを睨み付けた。


そんな顔で見られるのは悲しかった。


いや違う、戦いたくないのに戦わざるを得ないこの状況が悲しかった。


じゃあ、なぜ自分はここにいるのだろう。


「息子に触るな!この半人!」


さっきまで腰を抜かしていた里の男がかぐやを突き飛ばして男の子を引き寄せた。


男が自分を見る目は魔物を見る目と同じだった。


心を鷲掴みにされた気がした。


半人って、私は完全な人じゃないの?


だから、魔物を倒すことをためらうのだろうか。


「ち・・・違うっ!」


かぐやに殺気がほと走る。


『狂骨魔がこっちに来るぞっ!』


狂骨魔は森から何頭も森から頭を出している。


その一匹が駆除役の里守を振り切り地響きを立てて向かってきた。


「全員里へ走れ!」