「お姉ちゃーん、里守のお姉ちゃーん」


可愛らしい声が遠くから息を切らして駆けつけてきた。


「お姉ちゃん!さっきはオラやおっ母を助けてくれてありがとう」


かぐやはポカンとして、まだ幼い男の子が一生懸命話すのを聞いた。


先ほど土人族に家ごと崩され、押しつぶされそうになったところを救った者たちだ。


「どうしてもお礼を言いたかったんだ。お家潰れちゃたからこれしか渡すものないけれど食べて元気出して」


男の子は自分の手のひらより大きな梨を渡してくれた。


お礼を言いに来たものの、かぐやの体の痣や元気がない様子を心配して励ました。


「ありがとう。お姉ちゃんお腹すいてたんだ。これ食べたら元気になれるよ。だから、僕もお母さんと一生懸命に生きてね」


男の子はニコッと笑うと背を向けて走り出した。


その先には男の子の両親らしい人たちが他にも子どもを連れてたっており、かぐやと目が合うと何度も頭を下げながら去っていった。


「里内で戦闘になったことなんて、これまでほとんどなかったからな」


かぐやのことをこれまで噂のみでよく知らず、冷たい言葉を吐いていた者たちの幾人かは今回のことで本当のかぐやの姿を知ることができたのかもしれないと、銀司も白虎も心の中で思った。