「ぬおっ、危ないっ」


大飛鳥が揺れて、銀司が慌てて手綱を引く。


「銀司隊長がかぐや隊長に妙なことするから大飛鳥も怒ったんすよ」


「うるせぇ、黒居!これでも食って黙っとけ」


銀司が干し肉の塊を投げつけた。


黒居は上手に口でキャッチすると、笑いながらそれを食べた。


「せっかく久々にかぐやと二人きりに
慣れたと思ったのによぉ」


ぶつぶつ文句を言っていたが、かぐやが自分の手を銀司の手の甲に重ねてやることで静かになった。


「俺らもいるってば、銀司隊長」


里守の一人が言うと里守の中に笑いが起こった。


「皆不謹慎だな、里が心配じゃないのか」


「ああ、おまえ功駕隊長のとこのやつだな。俺らの銀司隊長は心配なことを心配しすぎるな、不安なとき不安になりすぎるなって考えだ。負の感情を抱きすぎても冷静さを失うだけだし体が固まって動けなくなるだけだからな」


それを聞いた里守は面食らった顔をして押し黙った。


「ようっしお前ら今のうちに体力回復させておけよ、里に戻ったら大暴れしてやる!」


部下たちのやり取りも聞いておらず、一人張り切りだす銀司の声が響く。


白虎じゃあるまいし、銀司の言動は根っからの能天気さにあるような気もするが、かぐやには重ねた手のひらから銀司の強い力が伝わってくるようだった。