「こりゃひでぇな」


一つの里が燃え尽きて壊滅状態になり、焼け焦げになった死体の匂いが鼻を捥ぐ。


銀司の目から下は黒い布で覆われているがそんなもので到底遮られるものでもなかった。


「達磨火のせいで・・・俺らの村はああああ」


煤だらけで着物の端が焦げている里人が言った。


達磨火は大人が手を広げたくらいの大きさの火でできた球体だが、形状を自由自在に変えることができ、あらゆるところから業火を吐く魔物だと、かぐやたち明星の里に救援を求める知らせが届いたとき、救援部隊を命ぜられると同時に知らされていた。


「生き残りはこれだけなのか」


村のはずれの空き地に萌え残った柱に布をかけただけの小屋にはけが人が多数寝かされていた。


他の者は虚ろな目で虚空を見つめていたり、死体にしがみついて嗚咽を漏らしていたり、銀司たちが差し入れた食料を漁っていたりと目を伏せたくなるような状況だった。


「この里の里守はどうした?」


「相手は火を噴く化け物です、手も足も出ず焼けちまった」


「しかし千歳の里の里守は精鋭ぞろいのはず。里長の時未殿はどうした」


「達磨火に襲われるひと月前にあった馬篭の里との戦いでうちの里は戦力を削られ、時未様もその時に深手を負ってお亡くなりになりました」


「なんだと、そんな話は明星の里には届いていない」


「まだ馬篭とは冷戦状態にあり、迂闊に知られては困るのです。しかし、こうなってはもはや千歳の里は終わりだ」


男はうなだれた。


「で、達磨火はどこへ行ったか」


「日が昇る前に西の空に消えていきましたでさぁ」


「よし、かぐやの隊は里に残ってけが人の手当を手伝うと同時に詳しく調査だ。俺と功我の隊は西へ向かう」