白虎でも照れることがあるのか、頭をかいた。


「私、目覚めたときから何かとても大切なことを忘れている気がして心がざわざわするの。でもずっと思い出せなくて」


「狂骨魔が現れたとき禍曼が飛びかかってきたのに、戦おうとしなかったな」


「里も里の人も守りたいって思ってた。でも同時に魔物とも戦いたくないって強く思った」


白虎は固く口を結んでしばらく考えていたが、やがて静か打ち明けだした。


「かぐやが里から姿を消したのもそのことが深く関係している。俺たちがおまえを見つけたとき、すごく危険な状況だったんだ。二度とあんな目に合わせたくない。このことは思い出さなくていい」


白虎の強い口調に圧された。


そこへ銀司が空中から落ちてきて二人の背後にダンっと着地した。


「かぐやと白虎が手合わせしてるって聞いて駆けつけたのにもう終わってたか」


「とっくにな。来るのが遅すぎだ」


「用事がなかなか抜け出せなかったんだっつの!」


「よっ、かぐや久しぶりだな」


「なんだ避けてたのか」


白虎がぼそりと呟いた。


「違うわっ!」


「里長様が白虎と手合せしろっておっしゃったの」


「ってことは、外の任務に行かせるかどうか判断するってことだな」


「よしっ、俺も付き合ってやるぜっ!」


「だから、さっき終わったって言っただろ」


「他の奴らは張り合いがないからな。体がなまっているんだ、俺と勝負しろおおお!」


「面倒くさいやつ」


結局、日が暮れるまで二人は銀司に付き合わされることになった。